頓死

2026年06月17日

 久々にあいつがものを書いた。あいつは最近何も書いてないじゃないか。あいつがこのあいだ書いたやつが全然ピンとこない。あいつはついに小説家になってしまった。君の処女作、よかったよ。書きたいだけですよ。書いたら読んでもらえるだけで幸運。書いたそばから本当になった。いつも書きながら考えている。書いたら一体どうなった。かいたら。かいたら。


頓死(とんし)という言葉を昔、本で見つけた時に、これだ、と思った。うっかり自分でフグの毒にあたって、死んでしまうような絵ずらだと思う。あるいは工事現場で落ちるはずのない穴に落ちて。なんとなく、中年の、働き盛りの、耳や口元に脂がのったような、大黒柱の、おっさんの頓死が目に浮かぶ。子を残して。妻を残して。権力を持っていたら、向こう三年くらいのおっさんの周りの人的配置が影響を受けるだろう。しかし、枯野の、木の葉のように、結局地面に落っこちてしまうのだから、大局から見れば何の動きにもならない。


庭のエノキの木の強剪定をやっていたら、翌年の春に無数の枝が出て夏には葉っぱが以前より茂った。強い日光を透かした薄っぺらい葉っぱが、風の中にゆれている。ある庭木の専門書には、翌年に綺麗な葉っぱを楽しみたいならば思い切って根元から切るべし、と書いてあった。


命の重み。

は、結局、命の軽さ。なのじゃないかとずっと考えていたことが、実際に言葉として在った、と思って、頓死、本当にいい響きだと思う。


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imanari tetsuo

 
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