関西
三日間ほったらかしてたぶん、猫がうるさくて何も何も手につかないけど、がんばってホームページを立て直したりした。片道10時間、繰り返しドアから風が吹き込むから、鈍行列車は行きも帰りも体に応えた。それでも休憩で降りた夜中の熱海駅では北風にさらわれそうになりながら禁煙のロータリーで胸張ってタバコを吸ったりした。行きの不安はよそに帰りはヨイヨイ。ずっとゆるかったお腹もだんだんこなれてきた。立食いソバみたいなものをここ半年くらい憑りつかれたに食べてしまうけれど、どこか弱いんだろうか。闇に月なのか。そんな風なのに人を求めて、毎晩誰かにプロポーズしている。結婚して!とか言い散らせば言い散らすほど そういう絵は遠のいていくし、ハクチか、とか、もうかなりあきれられてるんだろうけど、やっぱり、きれいだね、とか素敵だね、とかそういうのはもう何様か、どの面下げてか、と思ってやっぱりなんならプロポーズしようと思ってしまう。べつに誰もからかってるわけではないよ。誰でもいいはずがないよ。
前日入りするつもりが宿無しの深夜着になってしまって、ユーゲに駆け込んだらやっぱりだいちゃんがいた。こんなにいつも脱走兵に優しい店があるのか。井上さんの顔をみたらバアマッチの内容がどんどん思い出せたのであれこれ感想を言った。川の浅瀬にエレキベースが捨てられているシーンはETのラスト前とは関係ないんですか?十人くらいの会いたかった人たちが二時くらいにやってきてなんだかいきなり旅が終りそうだった。吉田寮のソファーまで歩いていって、昼まで寝た。
大阪はいつ行っても頭が真っ白になるような瞬間があっていつも刺激的。梅田のビルディングは風をおこすから、いつも追いかけ回される。アンディはお母さんと二人で喫茶店に立ち、押し寄せた客達(アンディをとても慕っているように見えた)に愛を振りまいていた。もう三年もやっている。みなみが潰れるわけだと一人納得して、最後にポツンと演奏した。邪念はいつもよりも差し込んできて、ああ予想した通りだなとおもってむしろほっとした。音楽なんてこんなものだと思う。はるばる伊丹から来た英夫は相変わらず一進一退の闘病中で、二人で終電を逃してカラオケボックスで暖をとった。何にも盛り上がらないで、becauseとか、juliaとか、womanとか、ビートルズやジョンレノンの暗い曲や淡い曲を半分も歌えずに送信しつづけた。うとうとしながら英男の英語の発音が不思議に闇を埋めるなあとか思って、座って、半分眠った。
京都について、朝から仮眠がとりたくて映画館に入り、男が全裸で車を燃やす映画を見た。眠れるはずもなく。ぼおっとしながら、竜巻のような空のなかを歩いた。時々晴れ間がさしてきて、その度に顔を洗おうとする。おおさわが河原でタモンさんという人たちと花見をしてるからそこに来いという。ギターをおぶったまま、川を遡上すると、長谷川や、すみよさんがいたりして、子供らが走り回っている。長谷川はおしり探偵の調査で来ており、タモンさんはインド仕込みの絵描きだという。そういう感じでブルーシートに皆が乗っている。すみよさんは豪快に笑っている。ミュージシャンですか?そうです。今夜京都でライブがあっるんです。そうだ。会場に向かわなくちゃ。
ゆすらごでまたライブが始まった。いつかすーじんという東京で抽象表現をしているひとの公演を見て、実は全く違うことを考えながら見ていて、それなのになんだか久しぶりに腑に落ちた。だからどうしても作りたい曲があって、ここ数回ずっとライブでやってみるのに毎回全然言いたいことが言えないでいる曲みたいのが一節あって、この日も完成しなかった。おおさわや長谷川とか麻布の友達がニュアンスをわかってくれたような気がしたのがちょっと面白くって、またやらなきゃなと思った。今の今まで井手くんのポルターガイストが頭から離れないのは今度会った時に伝えなきゃいけない。かれは一見シンとしてるけど何か途方もないものをおっぴろげようとしてるんじゃないか。井手君たちはそういうチームだった。
いま猫が駄々をこねた。
泊めてもらったのは老成した森の家で、深夜、着く。ここにいるといつも子供の時みたいな気持ちになる。崩れ落ちるように眠って起きてみたら朝から土鍋で米を炊いている。ハングルはな、りんごのんの音とパンダのんの音は違うねん。パンダじゃなくて電話かもしれない。