石のおにぎり
2019年11月09日
積み重ねたり、我慢したり、期待したり、させたりしていた目線が、テーブルの上の、石のおにぎりに落ちて、すーーと喧騒が遠のいた。時間が一瞬なくなって、石を撫でて、石を褒めた。月に一度恋をして、月に一度泣いたは石のこと。あなたのこととわたしのことが、どっちがどっちかかわかんなくては石のこと。おかかをまぶしたり、梅がのぞいたり、炊きこまれて家族のにおいがするんだ石のこと。喧嘩したよ石のこと。迷惑かけたな石のこと。焼いた石が、ストーブの代わりだ。秋のこと。名前を呼びあって、高い山にも登った。昔のこと。ボロボロ泣きながらおにぎり食べる女の歌を思い出したな新宿の隅。旅から帰ってもあいつは何にも変わらん。全く。